導入事例

2025年05月29日
高所作業に潜む災害リスク回避を目指し、ドローン点検の可能性を検証
実証試験
点検

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日産自動車九州株式会社さま

日産自動車九州さまの工場には多くの大型クレーンや走行レールが設置されており、その点検には保守員の方々が高所の狭い歩廊で作業しなければなりませんでした。また、工場建屋の点検・補強においては、工場非稼働日などに高所作業車を工場に搬入する必要がありました。こうした高所作業での災害リスクを低減するとともに、業務工数の削減を目指し日産自動車九州株式会社さまでは、「ELIOS 3」と「Skydio 2+」の導入検討のための実証実験を行いました。

導入前の課題
  • 高所の歩廊に登って行う点検作業をより安全に行い災害リスクを減らしたい
  • 建屋の点検時に使用する高所作業車を使用するには、工場非稼働日に工場内の機械や部材を移動させてスペース確保する必要があり、そのための作業負荷を低減したい
  • 地震などの災害発生時にも、安全に点検や状況確認を行える体制を構築したい
導入後の成果・効果
  • ELIOS 3とSkydio 2+は画質が良く、目視点検で求められる品質を十分に確保できた
  • ELIOS 3とSkydio 2+の飛行は安定しており、工場内でも安心して飛ばすことができる
  • 高所作業車を使用する場合と比べて、ドローンは離発着場所の確保で済み、準備・撤収の工数がかからない

大型機材や建屋を点検する際の高所作業を減らし、安全性向上と業務効率化を目指す

Q:ドローン点検の導入を検討する前に抱えていた点検業務などに関する課題について教えてください。

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日産自動車九州 工務部 第二技術課 T.Iさま

私たちの部署はプレス・圧造を担当しています。大型クレーン本体や走行レールの日常点検作業は、地上15メートル、幅1メートルの歩廊で目視、打検を行います。これが1カ月に25回程度あります。また地震の際には、余震が続く中で臨時点検をする必要があり、高所の点検業務をいかに安全に行うかが長年の課題でした。

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日産自動車 グローバル資産管理部 一級建築士 H.Aさま

私は工場の建屋のメンテナンスや管理を担当する部署に所属しており、建屋の建て替えなどの大規模なものから、雨漏りなどの小規模な補修までさまざまな業務に対応しています。工場内は広く天井も高いため、点検などには高所作業車を使用します。夜勤の生産が終わってから高所作業車を入れるためのスペースを空け、作業後は翌営業日までに復旧しておかなければならず、肝心の点検作業以外の工数がかかっていました。

今回の実証実験を行ったプレス工場では、これから本格的な耐震補強工事を予定しています。柱や梁といった上部構造物のほか、配管・配線といったインフラ関係の設置状況の調査をどのように行うかを検討中でした。

Q:他の技術もある中で、なぜドローンを選択したのかを教えてください。

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Iさま

すべてのクレーンに何台もの固定カメラを設置するのは現実的ではありません。機動性のあるドローンが便利だろうという議論を以前からしていました。ただ、少し前までは価格が高い、操作が難しい、画質が良くないなどのイメージがありましたが、近年ドローン技術の進歩が目覚ましく、検討しようということになりました。昨今、さまざまな用途でドローンが活用されるようになり、工場というものづくりの現場でもドローンを活躍させたいという思いがありました。

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Aさま

建屋の点検に高所作業車を利用せず、足場を組むという方法もあります。しかし、これでは時間がかかり、工場が稼働しない休日だけで対応するには時間が足りません。ドローンなら発着のわずかなスペースが確保できれば、準備や片付けの手間がかからず効率的に点検ができます。また、いろいろなアングルの撮影ができて、そのデータを活用できるという面でもドローンの可能性に注目していました。

ドローン活用やプラント保全の知識・実績、信頼感で九電ドローンサービスをパートナーに選定

Q:九電ドローンサービスをパートナーとして選定された理由を教えてください。

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Iさま

九電ドローンサービスは、九州電力のプラント保全などで蓄積してきた確かな実績があります。つまり、ドローンに関する知識だけでなく、工場など特殊な環境・状況の中でのドローン活用についての経験が豊富に蓄積されているということです。この点を高く評価しました。

加えて、九電グループ企業という信頼感・安心感や、コミュニケーションが取りやすいということもポイントでした。実際、スピーディーでフレキシブルに対応していただけました。 

Q:ドローンの機種選定にあたり、重視した性能や機能について教えてください。

Iさま
機種選定にあたり特に重視したのは、「ぶつからないこと(あるいは接触しても問題が生じない)」と「照明が不十分な場所でも点検作業に使える画質であること」でした。九電ドローンサービスが提案してくれたELIOS 3とSkydio 2+はこれらの要件をクリアしていました。

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Aさま
バッテリーの駆動時間も条件にしていました。連続飛行時間の長さは調査作業の効率を大きく左右します。高所作業車を使って作業員が1日掛けて見ていく作業を1台のドローンで撮影し切ることができるかどうかがポイントでした。

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九電ドローンサービス 北九州エリア 小野 成昭

当社は多数のドローンを用意しており、工場内の高所点検作業に適した機種も用意しています。私たちは、お客さまがドローンを使いたい場所や意図、目的に合わせて機種をご提案できることに加え、お客さまと一緒に使い方を考えるよう心がけています。そのため、最初にご紹介した機種がミスマッチだったとしても、すぐに別の機種に代えて再確認できます。

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今回ご提案したELIOS 3とSkydio 2+は、カメラの品質、衝突防止機能、飛行時間の点で条件にマッチしていました。ELIOS 3の飛行時間はSkydio 2+より短いものの、工場内での離発着ポイントと撮影箇所の距離を計算したところ、十分に用途に適していると考えました。

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期待していた以上の高性能、高画質構造物の3Dモデル化という新たな提案も評価

Q:実証実験を終えて、どのように感じましたか。

Iさま
普段地上しか移動していない工場内を上から見た景色が新鮮でした。実は、小型ドローンは飛行が不安定だというイメージがあったのですが、今回利用したSkydio 2+は良い意味で期待を裏切る高性能で驚きました。衝突に対して自律制御しており、万が一オペレーターが操作ミスをしてもフェールセーフが機能するので安全だということがわかりました。

また、十分な照度がない建屋内でも映像ノイズが少なくて明るく、機体が振れてもカメラが一定方向を向くジンバル性能でブレのない映像を得ることができます。高所での目視点検作業を効率化できると確信しました。今後、今はまだ実現が難しいかと思いますが技術の進歩で、打検作業ができるようになることを期待しています。

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※屋内施設にてSkydio 2+が高所点検している様子(左:機体カメラ、中央:高所点検の様子、右:機体録画映像)

Aさま
高所作業車を利用するには、工場内の設備や部材を動かしてスペースや動線を確保する必要がありましたが、ドローンならばそれらの準備・片付けにかかる負担を大幅に低減してくれると感じました。ドローンを継続的に利用することで、業務の効率性は大幅に高まると思います。また、災害発生時は建屋に近づくことさえ危険です。そのような状況下でもドローンは存在感を発揮してくれると思います。

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点検業務では過去との比較も重要です。ドローンを単に目視作業の代わりとするのではなく、ドローンで撮影した写真・映像のデータを保存していくことで継続的な記録を残すことができるようになり、常時と非常時の比較も容易に行えるようになります。

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※このようにLiDAR搭載のドローンを飛行させることで屋内施設の点群データを取得し、施設の3Dモデリングも可能

Q:九電ドローンサービスへの評価をお聞かせください。

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Aさま

実証実験の最中に、操縦中の画面を見せてもらう機会がありましたが、その際に「もう少しこっちを見たい」といった私たちの要望に柔軟に対応してくれました。パイロットの技術やデータに関する知識についてもすばらしいと感じました。

また、提案力も高かったです。例えば、建屋内の構造物を3Dモデル化するというのも九電ドローンサービスからの新たな提案でした。こういった提案力や、実証実験の結果に対する検証力が高く、当社のニーズを的確に理解し、解決策を具体化してくれたと感じています。

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Iさま

100点満点中120点です。依頼内容を確実にやっていただけたので100点。3Dモデル化など新たな提案に対する加点が20点。九電ドローンサービスは単なる外注先ではなく、私たちに寄り添いプロジェクトを進めるパートナーといった存在で、とても心強いです。

費用以上の効果が期待できるドローン導入設備保全の各部署に活用を広めていきたい

Q:日産自動車九州さまにおける今後のドローン活用の展望や、ドローン導入を検討している企業さまに向けてアドバイスがあればお聞かせください。

Iさま
今後は、設備保全に関わる各部署にドローン活用を広めていきたいです。そのためには社内での利用拡大に向けた情報発信が重要だと考えています。「ドローンを使うと、こういう効果がある」「こうした面白いことができる」といった情報を周知させると同時に、活用のための社内体制の整備が大切だと思います。また、当社は学生・児童の工場見学を受け入れているので、記念写真をドローンで撮影できたら面白いと思います。

ドローン導入を検討している企業さまに伝えたいのは、「安全対策の第一優先は危険に近づかないこと」です。ドローン1基と人の命、どちらが重いかは明白です。また、頻発する地震対策としても、ドローン導入は費用以上の効果が期待できると思います。

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Aさま

ドローンの活用が進めば、デジタルデータも大容量になるため、データの管理方法や授受方法などの社内ルールづくりも必要になってくると思います。また、扱える人材を社内で育成し、適切な人数を維持しておくことも大切です。緊急時に1人でも多くのドローンを扱える人材がいれば、それだけ迅速に対処できるようになります。

使用した機材

事例でご紹介した企業さま

高所作業に潜む災害リスク回避を目指し、ドローン点検の可能性を検証
会社名・組織名
日産自動車九州株式会社
業種
自動車製造
設立
2011年8月1日(前身 日産自動車九州工場 1975年操業開始)
所在地
福岡県京都郡苅田町新浜町1番地3
URL
https://www.nissankyushu.co.jp/
導入事例の具体的な成果・効果の詳細については
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